久しぶりに、メンタルチャレンジの子供達の施設時代の思い出話です。
彼らは、私たちのように、自由に文字や、言語を利用して、コミュニケーションしたり、自己表現したりができません。(一般の、あるいは、肉体的、知的に健康な人でも、自由で、豊かな文字表現、言語コミュニケーションが、難しくなりつつある世の中でもありますが。。。)
でも、人一倍、二倍、感情の起伏や、感性のひだが、多かったり、複雑だったり。。。の彼ら。そのため、”生きる”行動全てが、彼らの訴えだったり、表現だったりします。
以前の記事にも、ちょこっと、書きましたが、自傷、他傷、破壊行動、パニック。色々な形で、彼らのストレスや、不安、もやもや、理解しきれない、表現しきれない感情が、行動になって現れます。
不安や、もやもや、受け入れられない不快感。そんな、感情が、たまり、爆発するときに、それぞれ、形にしやすい行為があるようでしたが、弱い子ほど、”噛み付く”傾向がありました。
”噛み付き”は、動物が持つ、一番、次元の低い(低いという表現は誤解を招くかも。一番、原始的な)攻撃または、反撃方法なんだそうです。
弱い。。と言ったって、がたいは、大人。筋力は一般の大人並み。弱いというのは、”耐性”(我慢の力)とか、”理解して消化する能力”の部分なので、私が、3年目に担当していた男子クラスの子達は、15歳―25歳で、普通に大きかったし、そんな彼らに ”噛み付かれたら”。。。想像できます?
私は、ちゃんと、事前に、『もし、噛み付かれたら。。』という、アドバイスをされていました。
(そんなトレーニングある会社ないだろ~な~。)
『あなたが噛んだ~、小指が痛い~』なんて、悠長な歌が昔ありましたが、もし、彼らに、手の指を噛まれたら、もし、そんな場面に、自分が遭遇したら、皆さんはどうします? 彼らの行為には、手加減はありませんよ。。心底、思いっきりです。
私は今までの人生の中で、3人ほど、『一度で、良いから、思いっきり、誰かに、噛み付いて見たい』っていう発言をされた方に、お目にかかったことがありますが、私は、多分、数少ない、一生に一度、思いっきり噛み付かれたことのある人なんです。
先輩の先生方からの、アドバイスは、『噛み付かれたら、絶対にしてはいけないこと。それは、その子の口から、噛まれた手や、腕を、引っ張って抜こうとすること。』 つまり、これをしてしまったら、指やら、肉やら、まじで、引きちぎれてしまうんです。じゃあどうするって? 逆を行くんです。 噛み付かれたら、その手や腕を、思いっきり、その子の口に押し付けるんです。 そうしたら、頭がそる。そして、口が開く。。。
私に噛み付いた、しゅんちゃんは、私より背の高い、18歳の男の子でした。日中の作業場訓練で、なにやら、思い通りにならないことが、蓄積していたようで、もやもやしながら、生活区に帰ってきました。『お帰り~。しゅんちゃん。最初に手を洗ってね。』と、声をかけた、私の立ち位置が悪かったのです。ホントは、彼は、自分の部屋に走って戻って、自分の部屋で、もやもやを発散したかったんでしょう。その彼のルートをふさぐように、立ちはだかってしまった私の左の肩近くの、上腕に、彼は、思いっきり、噛み付いてきました。。なぜか、スローモーションのようにその動きが見えて、同時に、『ひっぱっちゃだめ!』と、聞こえたようでした。思いっきり、その肩を彼の口、顔に、逆に押し付けたら、やっぱり、放して、自分の部屋に走っていって、怒っていました。 しばらく、彼の興奮は、収まらず、自分に腹を立てたように、いらいらを、自分自身を叩いたり、自分で、自分の足をけったりして、発散していました。。。
時間は、少しかかったけど、私自身がいつもと変わらず、動揺を見せず、淡々と、おんなじタッチで、関わることで、彼の、私に向けての、いらいらもやもや。。は消えて行きました。
でも。。。Tシャツの上からだったにも、関わらず、私の上腕には、ものすごく立派で、直径6センチくらいでしょうか、きれいな、まん丸の歯型が、ばっちり、付きました。一つづつの、穴から、少々、血も、にじみ出てました。時間がたったら、そのまん丸の中の部分が、真紫になって、かなり、ぽっこりと、腫れました。今でこそ、歯型は、きれいに消えましたが、何年も、何年も、残っていました。(実家の母は、ものすごく、ショックを受けていました。。嫁入り前の、20代の娘に。。。って。でも、遅かったけど、嫁にも行けたし、傷も、完全に無くなった。めでたし。めでたし。)
3年で、その施設を退職して、カナダにワーキングホリデーで来るとき、お約束の、健康診断がありました。指定病院ってことで、東京タワーが、診療室から見える、お医者様に行ったときの事。
診断しながら、私の腕の、生々しい人間のそれも、成人の歯型に、動きが止まったお医者さん。数秒考えてから、その傷を、手で、なでるようにしつつ、『こ、この傷は、生まれつき。。ですか。。。。。?』って。 『ぷっ!』 思わず、笑ってしまいました。『この傷がぁ??そんなわけないでしょう~~!』 これこれ、こんな仕事と事情で。。。って、話したら、『そうですか。。そんな事情で。。』と。内心最初は、きっと、『この娘は、ふつーの顔して、彼氏と危ないプレーでもしてるんだろう。。』と、思われたんだろうなああ。。でも、なんて声をかけたら良いか、見当もつかなかったんだろうなぁ。。と、思ったら、おかしくて、たまりませんでした。(同時に、とっさに、生まれつきですか?という言葉を選んで発した、この先生の、やさしさも、ちょっと感じました。)
何事にも、『備えあれば憂いなし。。』とも言いますが、肉体的傷や、精神的傷は、備えがあっても、起こってしまったら、完全に立ち直るには、相当なる時間と、ヒーリングのエネルギーが必要なんですよ。。。。。。。。でも、ちゃんと治るし、学びもあるし。。。 どんな経験も、この人生の宝。です。
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